子犬のワクチンプログラムについて

 春に向けてワクチンのお話です。

 犬には国から義務づけられているもので狂犬病予防接種があり、任意のものでは混合ワクチン接種があります。いずれの予防接種も基本的には年1回のワクチン接種が必要となります。

 ただし、幼犬の時期は2~3回の接種しますが、初回の接種時期によって回数が違ってきます。


★初回接種生後9週齢未満 ⇒ 3週間隔で3回接種

■初回接種生後9週齢以上 ⇒ 3週間隔で2回接種 

 

 接種が1回で済まない理由としては、1回だけでは十分な抗体が得られない為です。母子免疫(胎内で得た免疫力)は誕生から時間が経つにつれ少しずつ減っていきます。それに代わってワクチンで免疫力(抗体)を補ってあげる必要があります。

 しかし母子免疫の減り具合によりワクチンの抗体値の上がり方が変わります。下の図を参考にして頂きたいのですが、初回ワクチンが生後6~9週齢の場合(3回接種ライン)と生後9~12週齢(2回接種ライン)で抗体値の上り幅が違ってきます。生後6~9週齢で初回ワクチン接種の場合は母子免疫がある程度残っているので上り幅が小さいですが、常に一定の抗体を持ち続ける為、病気にかかるリスクが少なくなります。生後9~12週齢の場合では母子免疫がかなり少なくなる為、病気にかかるリスクが上がります。

 

 ペットショップ等では生後45日齢(生後6週齢)から販売が可能な為、病気の感染を防ぐ為に初回ワクチンが既に接種されている事が多いです。購入した時の年齢によって飼主様が1回あるいは2回のワクチン接種をする必要がありますので、初回接種時期が記載されているワクチン接種証明書を獣医師に確認してもらいましょう。

 2~3回の接種をしっかり行うと抗体値が安定してきます。その後は年に1回の接種で病気を予防する事が可能です。

 

 混合ワクチンで予防できる病気、ワクチンアレルギーなどの詳細は過去のブログ「病気は予防から…犬のワクチン接種のすすめ」や「診療案内・予防接種」をご参考下さい。

 

 最後に。狂犬病は人獣共通感染症の為、国から予防接種を義務付けられています。現在の日本では狂犬病の発生はありませんが、全世界では3~5万人が狂犬病で亡くなっています。狂犬病は発症すると治らない上、死んでしまう恐ろしい病気です。

 日本同様に発生がなかった島国の台湾で狂犬病の発生があり、獣医師の間では大きな話題となっておりました。今は発生のない日本でもいつ入ってくるかわからない状況でもある事が言えます。万が一狂犬病が発生した場合、発生源を辿っていく事になると思いますが、感染の広がる恐れがある場合は狂犬病予防接種を行っていない(未登録)犬は淘汰されるかもしれません。口蹄疫や鳥インフルエンザのようになると思われます。

 「接種する必要性が感じられない。」とおっしゃられる飼主様もいらっしゃいますが、エボラ出血熱で大変な事態になっている事をふまえると世界との距離が縮まっている世の中ですので、今後の日本で発生が絶対ないとは言えません。飼い主の義務として毎年の狂犬病予防接種をお願い致します。

  

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