甲状腺ホルモンの病気について

 飼われている動物の普段の状態を気にかけていますか?

 元気・食欲・糞尿や皮膚の状態がどのような状態に健康かを見て感じて覚えておく必要があります。そして何か少しおかしいなと思った時は、健康な時と比べてどういう状態なのか?を動物病院で獣医師にご説明頂けると、病気の判断がしやすくなることがあります。しかしながら、臨床症状のみで判断しずらい病気もあります。今回は甲状腺ホルモンの病気について書いていこうと思います。

 

 ●「甲状腺ホルモン」って何?

    ほぼ全ての臓器・細胞に対して代謝活性、分化増殖などを働きかけるホルモン。

 

 その甲状腺ホルモンが少ない場合と多い場合に起こる病気を紹介します。

 

【 甲状腺機能低下症 】

 高齢の犬に多く発症する病気。老化によるものなのか、病気による症状なのか一見判断しずらい為、血液検査を行い、確定診断します。

 

 症状としては、代謝が不活発となる事で無気力になり、動きが緩慢になります。特に朝の寝起きが悪くなります。食欲はあまりないが体重増加している、低体温(37度前半)により寒さに弱くなるといった事がみられます。

 また内分泌性の脱毛が起こり、ラットテイル(ネズミの尾のようにシッポの毛が少なくなる)や皮膚の色素沈着(黒ずんだシミが多くなる)、膿皮症(細菌感染による発疹等が出る)といった皮膚の症状が出やすくなります。

 他によく診られる症状としては、筋肉虚弱(後ろ脚の筋肉が衰えてくる)や貧血・高脂血症があります。

 稀に起こる症状としては、心機能低下、様々な神経症状、腸運動低下に伴う便秘があります。

 

 治療は、甲状腺ホルモン剤(飲み薬)の投与を欠かさず行う事。それにより年相応の状態を維持する事が可能になります。

 

 

【 甲状腺機能亢進症 】

 中高齢の猫に多く発症する病気。甲状腺機能低下症とは逆に代謝が活発になりすぎている状態です。例えて言うなれば常にフルマラソンを走っているような状態で、常に身体にストレスがかかっています。

 

 症状としては、過食に関わらず体重減少、吐き気が多くなる、多飲多尿、活動性が亢進する(目がギラギラしたりと興奮状態で怒りっぽくなる)が見られます。この病気により全身に悪影響を及ぼし、肝臓障害や心疾患を併発する事が多いです。急激なストレスがかかると体が耐えられなくなり、突然具合が悪くなることもあります。

 

 原因は甲状腺の腫瘍もしくは過形成によるものと考えられます。この病気も臨床症状のみでは分かりずらく、血液検査によって判断します。

 治療としては、抗甲状腺薬の投与で甲状腺ホルモンの働きを抑えます。また外科手術で摘出を行う事もあります。

 

 

 

 中高齢のペットがいる飼主様で「もう年だから…」とおっしゃる方も多いですが、表に現れている状態が老化の為なのか病気が原因なのかは血液検査などで調べてみないと分かりません。

 犬でしたら、春に狂犬病注射やフィラリア予防などで来院する機会があります。その際に健康診断を同時に行う事が可能ですので、当院ではお勧めしています。

 猫はワクチン接種時もしくは秋の健康診断を猫向けに行っております。

 動物の健康状態を分析・理解して頂き、日々の生活にお役立て下さると幸いです。