今回は「目」についてです。
皮膚病・消化器症状に次いで、来院する頻度が多い症状が「目の異常」と言われています。どのような症状や病気があるのか、長くなりますがお伝えしようと思います。
◎涙・まぶたの病気
- 流涙症【りゅうるいしょう】
下眼瞼(下まぶた)の内反による鼻涙管狭窄の異常などから涙が溢れてしまう
病気。涙やけがひどくなると毛が変色したり湿っている目の周辺が炎症を起こし
たりします。
- 乾性角結膜炎
「ドライアイ」とも呼ばれますが、眼球が乾き、目やにが多くなり痛がります。
涙が少ない為、角膜に傷が出来やすく、角膜炎も引き起こします。
- 眼瞼炎【がんけんえん】
まぶたが全体的に腫れたりただれたりして、目やにが出ます。
- 麦粒腫
「ものもらい」とも呼ばれます。まぶたの一部が腫れ、目やにが出ます。
- チェリーアイ
目頭の中に隠れている瞬膜腺(第3眼瞼)が突出および瞬膜が反転する症状。
- 睫毛乱生【しょうもうらんせい】
「さかさまつげ」とも言い、まつ毛が角膜に向かって生えている状態。
◎結膜の病気
結膜は上下の瞼の裏側と眼球の表面を覆う薄い透明な粘膜(白目の部分)です。外
界と接し、ほこりや砂などの異物が入りやすく病気になりやすい組織です。
結膜の病気の多くは結膜炎で、充血、浮腫、目やにが出る、涙が多くなる、かゆが
る・痛がるなどの症状がみられます。
- 細菌性結膜炎
- ウイルス性結膜炎
- アレルギー性結膜炎
◎角膜の病気
角膜とは眼球の最も前にある透明な膜で「黒目」と呼ばれる部分です。角膜が障害
を受けると激しい痛みや目がショボショボする、目を閉じる、涙が流れるなどの症状
が現れます。
- 角膜炎
角膜に血管が伸びて炎症が起こっている状態のこと。
- 色素性角膜炎
角膜に黒い色素が出来ている状態。
- 角膜損傷
角膜に傷が付いている状態。犬猫などの動物は人間より眼球が前に出ている
為、傷が付きやすいです。
- 角膜潰瘍
角膜が白く濁り、穴が開くこともあります。
白内障と間違えられる事が多いです。
◎ぶどう膜の病気
ぶどう膜とは、目を構成する3層の膜の中間の膜です。虹彩・毛様体・脈絡膜の3つ
の部位があります。ぶどう膜は目の中へ血液や栄養を供給しています。虹彩はカメラ
でいう絞りの部分であり、光の強さによって瞳孔の大きさを調整しています。
ぶどう膜に炎症が起こると白目の強い充血、目がショボショボする、まぶたの弱い
痙攣、瞳孔が小さくなる、視力障害などの症状がみられます。
また、ぶどう膜炎から緑内障になる可能性があります。
◎緑内障
目の中は眼房水という水があり、この水の圧力(眼圧)で目の硬さや大きさが保た
れています。緑内障になると眼房水が溜まり過ぎてしまい、眼圧が高くなった結果、
目の痛みや視覚障害(失明)を起こします。
緑内障は自然発生する場合(原発性緑内障)と他の病気によって発生する場合(続
発性緑内障)の2つがあります。原発性緑内障は遺伝の関与が疑われており、続発性
緑内障は主にぶどう膜炎や水晶体脱臼などにより二次的に発症します。
症状としては、眼圧上昇による激しい痛み、白目の強い充血、黒目の白濁
(角膜浮腫)、瞳孔が広がる(散瞳)など、視神経や網膜が障害され失明する可能性
が高くなります。
◎白内障
水晶体が白濁した状態の事を白内障といいます。白内障の原因の多くは遺伝・加
齢・糖尿病(犬)などによって起こります。また老齢性白内障は進行が遅く、失明す
る可能性が低いのに対し、若齢性白内障は進行が早く、失明する可能性が高くなりま
す。
初期症状で見られる事としては、薄暗い所で物にぶつかる、投げたおもちゃに気付
かないなどです。
◎網膜・視神経の病気
- 網膜剥離
眼球の一番内側にある膜(網膜)が分離している状態。それによって視細胞が
障害を受け視覚が失われる可能性があります。
- 網膜変性症
網膜血管が委縮し、視細胞が死滅して視角が失われる遺伝性疾患。
- 突発性後天性網膜変性症
突然目が見えなくなる病気で、初期は視神経だけが障害を受けている状態です。
原因は不明とされています。
- 高血圧性網膜症(猫)
高齢猫に発生しやすく、網膜剥離や網膜出血により視覚が失われる可能性のあ
る疾患です。高血圧症が原因で発症します。
失明するという事は、とても恐ろしい事だと思います。目の症状は急に進行すると失明する恐れのある病気が多くありますので、早期の内に診察・治療を受けましょう。
しかしながら万が一失明したとしても、動物にとっての視力は、人間ほど大きいものではありません。鋭い嗅覚がある為、飼主のケアにより日常生活を送る事が出来ます。飼主が気付かない内に失明した犬が変わらず暮らしていたというケースも有る程です。
眼の病気にかかってしまった場合、恐れずに病気と向き合って対処していく事が大切だと考えます。