犬のアレルギーについて

 前回までの皮膚と食事に関連して、今回は犬のアレルギーについて書こうと思います。

 

 アレルギーは主に環境アレルゲンと食物アレルゲンによって引き起こされます。

 症状は皮膚が主ですが、口や肛門など外部とつながっている粘膜は皮膚の一部として考えられるので消化器にも症状が出ます。

 

 

<アレルギーの簡単な仕組み>

 あくまでイメージですが、特定の物質にのみ反応するアレルギー用の器が体内にあると考えて下さい。その器が何に反応するかは個体によって違いますが、全く持っていない場合もありますし、複数持っている場合もあります。

 

 食物アレルギーの場合。

 例えば牛肉(アレルゲン)に対するアレルギーがあるとします。牛肉アレルギーを持っている子が牛肉を含む物を食べると、牛肉に反応する物質が器に注がれます。

 アレルギーに気付かず牛肉を摂取し続け、アレルギー反応物質が器から溢れると症状が出るというイメージです。

 

 その物質が器からあふれなくなると症状が治まります。

 例えば季節の関連するアレルギー(草木、花粉など)は冬場になると無くなりますので症状が治まるという訳です。しかし器は持った状態なので、また時期になると再発します。

 

 この環境アレルギーの素因を持った子を、「犬アトピー性皮膚炎」(以下アトピー)と言います。

 アトピーの子がダニに対してアレルギーを持っていて、その症状が出ていれば「ダニアレルギー」と言います。

 

 

<症状>

 ● アトピーの場合

   1~3歳頃に皮膚の痒みが季節によって出始めます。

   主に症状が出る場所としては、脇の下・内股・足先・耳などです。

 

 ●食物アレルギーの場合

   1歳頃までに発症するケースがよく見られます。

   糞便回数が1日3回以上になる事が多いです。

   皮膚の症状は季節の関係なく現れ、顔面(目・口周り)・背中・肛門周り・耳・

   足先などに痒みが出ます。

   また消化器症状としては、下痢・嘔吐・腹痛などの症状が出る事があります。

   

   

< 診断方法>

 以前のブログ「皮膚病について」にも少々触れましたが、まずアレルギー以外の皮膚病を皮膚検査にて除外診断します。

 除外出来たら、次に症状が出ている場所・発症年齢・季節関連性の有無などから、アトピーか食物アレルギーかを推測します。

 

 

 ●血液検査

 犬のアレルギーは血液検査で調べる事が可能となりました。以前の検査では調べられなかった、反応する物質の量を測定することにより「この子は〇〇アレルギーです。」と言えるようになったのです。

 その反応する物質とは、環境アレルゲンは「IgE」 、食物アレルゲンは「IgEとリンパ球」というものです。

 明らかにアトピーが疑わしいのであればIgEの検査、食物アレルギーが疑わしければIgEとリンパ球の検査両方を行います。

 

 利点は原因が分かった上で治療が出来る事。

 欠点は費用が高価であるという事です。

 

 

 ●除去食試験

 食物アレルギーは蛋白質(牛肉・鶏肉など)に反応して起こります。

 

 まず、どの種類の蛋白質に反応しているかが問題ですが、確実にするには血液検査が必要となります。犬が本来口にしないと思われる蛋白質(羊・カンガルー・ナマズなど)のみを含んだ処方食を食べて調べる方法はありますが、時間と忍耐が必要となります。

 

 次に、蛋白質の粒の大きさ(分子量)が重要になります。粒が大きいと反応しやすいのですが、小さくするのには加水分解という技術が必要ですが、最近この技術を進化させ、ほぼ身体が蛋白質と認識出来ないレベルまで小さくした処方食が出ました。

 

 この処方食だけを1~2か月続けることで診断するのが「除去食試験」です。

  ①症状が消えた場合→食物アレルギー

  ②変わらない場合→アトピー

  ③少し症状が落ち着くが完全ではない→混合型

 

 利点は血液検査より安価(体重にもよる)で行える事。

 欠点は処方食以外の食べ物は食べられない為、ご家族全員の理解・協力と忍耐が必要になる事です。可能性は低くなったが、反応するアレルゲンが入っている可能性がゼロではない事です。

 

 

<治療>

 症状がある場合、まず投薬でアレルギー反応を抑えます。そして症状が治まったら維持に入ります。

 

 ●食物アレルギーの場合

 アレルギー症状が治まってから、アレルゲンを含まないフードだけを最低8か月~約1年続け、反応が無くなっていたら元の食事に変更してみます。

 再度発症したら長期に渡り、そのフードのみを食べ続ける事が必要となります。

 

 ●アトピーの場合

 アレルゲンとの接触が起こる1か月前から、抗ヒスタミン剤の投与が有効的だと言われています。

 また、アトピーの子は皮膚のバリア機能が弱いために、感染なども起こりやすくなっていますので、バリア機能を高める食事やサプリメント、シャンプーなどの外用をこまめに行う事が重要です。

 

 

 

 以前は食物アレルギーの犬は少ないと言われていましたが、実は意外に多いことも分かってきており、かつアトピーとの混合型が多いのもあり、治療を困難にしていました。

 近年、検査技術の向上やフードの改良によって治療も前向きに向かっています。

 繰り返されるアレルギー症状にお悩みの方は是非ご相談下さい。

痒いとしきりにその部分を掻いたり舐めたりします。
痒いとしきりにその部分を掻いたり舐めたりします。
コメント: 4 (ディスカッションは終了しました。)
  • #1

    ベル (日曜日, 08 12月 2013 18:50)

    こんばんは、トイプードルのティカップ3歳の雄です。1歳になる頃からかゆがり、凄い鳴き声で鳴きながら耳や口の回りなどをかじってます。静かな時でも足先や脇などかんだり舐めたりしています。時々注射や薬でその時は収まりますがまた、かゆがっていて見ていても切なくなります。先日爪カットに行った時アレルギー検査してみたら?と教えていただきました。やっぱりアレルギーなのでしょうか?また、検査は動物病院でしてもらえるのでしょうか?よろしくお願いします。

  • #2

    山田 有人 (火曜日, 10 12月 2013 10:36)

    >ベルさん
    お問合せありがとうございます。
    1歳頃から繰り返される痒みは食物アレルギーの可能性が高いと思われます。
    根本治療を望まれるのでしたら、ブログにある血液検査もしくは除去食検査を行いアレルゲンを特定し、含まれないフードを食べさせることで症状が落ち着いてくるかを診て行く事になります。
    検査は動物病院で行えますので、かかりつけの動物病院で聞かれると良いと思いますよ。
    また今後、ご質問がありましたらお問合せの方からお願いいたしますね。お大事になさってください。

  • #3

    ふき (土曜日, 08 11月 2014 22:39)

    初めまして、一歳5か月の狆です。5か月目?ぐらいから外耳炎を発症して今に至りますが、その前から後ろ足をよく噛んでいました。一歳になったらアレルギー検査をしてみては、とのことで今回お願いしたのですが、結果が……。環境2(屋外)は2+、食物1(肉)-+、他すべて+、(4段階〈良~悪〉-・-+・+・2+に分かれます)でした。こんなこともあるのでしょうか?一応行きつけの獣医さんより専用のフードを購入したのですが、正直結果に呆然としています。散歩にも問題があるのでしょうが(草むらに突っ込むことや、舐めてることがあるので)すべてのものに対してアレルギー反応がでることはあるのでしょうか?もう一度検査をしてみたほうが良いのでしょうか?よろしくお願いします。

  • #4

    山田 有人 (日曜日, 09 11月 2014 11:27)

    >ふきさん
    アレルギー検査についてのご質問ですが、説明が長くなりそうなのでよろしければお問合せ欄からメールアドレスなどのご連絡先をお伝え願えますでしょうか?